1999年10月17日(日) L'heure des fleurs 主催の秋のチャリティーのメインイベントとして「孤高のピアニスト」イングリット・ヘミング・フジ子さん(無料出演)のコンサートが開催された。私は話題のピアニストの素晴らしいライブ演奏を間近に聴けることを楽しみにしていた。場所は学習院百周年記念記念会館3階小講堂。入場料は¥2,000で、収益金は全額動物福祉団体、ユニセフ、癌基金に寄付されるとのこと。(動物福祉団体に寄付するということでネコ好きのフジ子さんはボランティアでこの出演依頼を、引き受けられた。)
まず、圧倒されたのは、彼女のステージ衣装であった。フジ子さん自身のコーディネイトであろうか、大きな花のついた黒い帽子に、白のレースのブラウス(左右の袖はアンバランスに切ってある。)に黒のロングドレスに、重ねた着物(四ツ身ぐらいの紫縮緬で、朱の裏地が鮮やか。)が、今年流行のフォークロア調のオリエンタル版という感じで、演奏を聴く前から、強烈な印象を受けた。フジ子さんでしか出せない雰囲気、個性、らしさがにじみ出ていた。
ピアノのタッチは力強く、彼女の弾くリストは聴き応えがあった。スラブ系のジプシー風といういでたちが、曲とマッチしていて、まさにフジ子の世界であった。チャリティーにもかかわらず、2時間近くの演奏会になった。アンコールには、ブラームスのハンガリア舞曲とリストのハンガリー狂詩曲の2曲。おまけに「ラ・カンパネラを先程やりそこなったからもう一度」とサービス満点であった。
フジ子さんは一見、「もしかしたら、御機嫌悪いんじゃないかしら」と聴衆の私達を心配させる。小講堂には、ピアノを囲んで円を描くように席が用意してあったが、私はフジ子さんの間近、4メートルくらいのところにいて、緊張したり、聴き入ったりと、いつもと違った演奏会を楽しめた。
演奏会が終わって、花束ならぬネコ缶バスケット(フジ子さんの9匹のネコのためにお申し出によりキャットフードをプレゼントしたとのこと。)を贈られて退場された。聞くところによると、いつものお気に入りのタクシーを待って、この会がお気に召されたらしく、「また、出演してもいいわ。」と言い残し一人でお帰りになった。魔術師のようなフジ子さんは気持ちの優しい人だった。フジ子さんにはこだわりがある。こだわりのある音楽家は好きである。