徒然情報(1999/10/23 )
つれづれ演奏会(No.2)
孤高のピアニスト、実はけっこう良い人。で、レシピはお休み。
フジ子・ヘミングさんのチャリティ・コンサート。

"ショパンとリストを弾くために生まれてきた"と欧州で称されたフジ子。そのピアニストとしての軌跡を描いた1999年2月放映・NHKドキュメント番組『フジ子〜あるピアニストの軌跡』は大反響を呼び、なんと2ケ月間で3回に渡る再放送が実施された。そしてさらに視聴者の要望に答え、7月にETVカルチャースペシャルとして続編『フジ子・ふたたび〜コンサートin奏楽堂』が放映。今まさに"時の人"として大旋風を巻き起こしている。試練、苦悩、そして成功・・・・リストの「ラ・カンパネラ」で奏される音一つ一つは、彼女の触れる鍵盤によって魂を吹き込まれ、人生の時々の鐘の音となって人々の心を打つ。心が歌い奏でるフジ子のピアニズムこそがまさに"彼女の巡った人生の軌跡"なのである。(Victor Entertainment,Inc.)


VICC-60123 \3,045

1999年10月17日(日) L'heure des fleurs 主催の秋のチャリティーのメインイベントとして「孤高のピアニスト」イングリット・ヘミング・フジ子さん(無料出演)のコンサートが開催された。私は話題のピアニストの素晴らしいライブ演奏を間近に聴けることを楽しみにしていた。場所は学習院百周年記念記念会館3階小講堂。入場料は¥2,000で、収益金は全額動物福祉団体、ユニセフ、癌基金に寄付されるとのこと。(動物福祉団体に寄付するということでネコ好きのフジ子さんはボランティアでこの出演依頼を、引き受けられた。)

まず、圧倒されたのは、彼女のステージ衣装であった。フジ子さん自身のコーディネイトであろうか、大きな花のついた黒い帽子に、白のレースのブラウス(左右の袖はアンバランスに切ってある。)に黒のロングドレスに、重ねた着物(四ツ身ぐらいの紫縮緬で、朱の裏地が鮮やか。)が、今年流行のフォークロア調のオリエンタル版という感じで、演奏を聴く前から、強烈な印象を受けた。フジ子さんでしか出せない雰囲気、個性、らしさがにじみ出ていた。

ピアノのタッチは力強く、彼女の弾くリストは聴き応えがあった。スラブ系のジプシー風といういでたちが、曲とマッチしていて、まさにフジ子の世界であった。チャリティーにもかかわらず、2時間近くの演奏会になった。アンコールには、ブラームスのハンガリア舞曲とリストのハンガリー狂詩曲の2曲。おまけに「ラ・カンパネラを先程やりそこなったからもう一度」とサービス満点であった。

フジ子さんは一見、「もしかしたら、御機嫌悪いんじゃないかしら」と聴衆の私達を心配させる。小講堂には、ピアノを囲んで円を描くように席が用意してあったが、私はフジ子さんの間近、4メートルくらいのところにいて、緊張したり、聴き入ったりと、いつもと違った演奏会を楽しめた。

演奏会が終わって、花束ならぬネコ缶バスケット(フジ子さんの9匹のネコのためにお申し出によりキャットフードをプレゼントしたとのこと。)を贈られて退場された。聞くところによると、いつものお気に入りのタクシーを待って、この会がお気に召されたらしく、「また、出演してもいいわ。」と言い残し一人でお帰りになった。魔術師のようなフジ子さんは気持ちの優しい人だった。フジ子さんにはこだわりがある。こだわりのある音楽家は好きである。



当日のプログラム

D.スカルラッティ ソナタ E dur, C dur
F.リスト
3つの演奏会用練習曲 第3番 変ニ長調「ため息」
ます(シューベルト歌曲 トランスクリプション)
魔王(シューベルト歌曲 トランスクリプション)
2つの伝説 第1番「小鳥に説教するアッシジの聖フランシスコ」
ハンガリー狂詩曲
愛の夢 第3番 変イ長調
パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調「ラ・カンパネラ」
〜休憩〜

F.ショパン
ノクターン 第2番 変ホ長調 作品9の2
小犬のワルツ 変ニ長調 作品64の1
エチュード  変イ長調 作品25の1「エオリアンハープ」
エチュード 変ト短調 作品25の9「蝶々」
エチュード 変ト長調 作品 10の5「黒鍵盤」
エチュード 3つの新練習曲 第1番 ヘ短調
エチュード ホ長調  作品10の3「別れの曲」
エチュード ハ短調  作品10の12「革命」



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