Nanasawa Articulates
ブランデンブルク協奏曲(全曲) / バッハ=ストラダル

「いくつもの楽器による協奏曲集」(Concerts avec plusieurs instruments)という原題のとおり独奏楽器もアンサンブル編成も多彩かつ豊富なため、ピアノ独奏用編曲は厳しいのだが・・・
「ブランデンブルク協奏曲」全6曲をピアノ独奏用に編曲したストラダル。彼の編曲における特徴として、可能な限り原曲の音を拾うために多声部進行が多くなることと、過剰なまでの左手の増強がある。2オクターブ以上のアルペッジョ、通奏低音のほぼ全てがオクターブであり、そのまま16分音符の速い走句へとなだれ込む個所が随所にある。適正速度での演奏自体に違和感があるというのも変な話だが、楽譜に忠実であればこのようなことになるし、楽譜が演奏者に親切であるかは、また別の問題だ。ストラダルは「クラヴィア協奏曲」(1番、5番)とオルガン協奏曲もピアノ独奏用に編曲している。 ナナサコフの11枚目となる本盤、ヴァーチャル・ピアニストの演奏をお楽しみ頂きたい。

       
 



Virtual Pianist
マズイ初演を聴かされたあなたは一体どうしたら良いのか。 一般に知られざる作曲家の作品をヘタクソなピアニストが弾いた録音を聴いた時の怒りに似た感情。それは「犯罪」に限り無く近い行為を目撃した者の気分だ。こんな時は人それぞれ、一番良い対処方法を考えるだろう。しかしその中に普通の場合は入らないのが「私がその作品の本当の演奏を皆に聴かせてやる」と心に決めて、握りこぶしを振り上げることだ。そんなことが出来るのはMarc-Andre Hamelin氏と他に数人しかいない。マズイ初演を聴かされたあなたは一体どうしたら良いのか。私は独自の方法で、それらの作品における最初の聴衆になることが出来るようになった。あなたに出来ることが二つある。一つは私と同じく録音すること、もう一つはナナサコフを応援することだ。続きを見る・・・

自分でやるしかないから
そう、私が聴きたいピアノ曲を誰もやってくれないから。音楽に向き合う人生でありたい、というより最初のリスナーになりたい、が当たっているかな。色めき興奮する時間は僅か、残りの大部分は同じことの繰り返しで日々の作業は決して楽しくはなく、むしろ苦痛に近い。CD一枚分で約10ヶ月を要するので、まさに産みの苦しみ。それでもやる。そして迎えるファースト・リスナーの喜び。 よい音楽は美しいピアノから、なのだ。



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